500文字の鵲ショートショート

毎日500文字のショートショートを記します。

ロバに乗る世界。

2044年1月、温暖化対策の抜本的な改革として車の代わりにロバに乗るという制度が施行された。自動車業界はロバ生産業界へと変貌を遂げる。外国から良好種を輸入し良質な自国種の量的生産を担った。全国民が小学生になると1人に1頭ロバが支給される。ロバの寿命は長く30年だ。そのため獣医師専門学校が人気になった。ロバの世話をロバの乗り手が全て行うとした事で、環境問題の改善の他に子供の情操教育にも貢献した。車代わりにロバ2頭で幌馬車を牽かせる。通勤、通学にはそれぞれロバに跨がり、会社学校に向かう。会社が遠い場合はやむを得ずテレワークに移行した。電車も理由が分からないが廃止され、線路跡はロバの幌馬車が電車代わりに行き交う。ゴミ問題の為に自転車も廃止された。バイクも廃止で、皆ロバに乗る。ロバの速度は今までの生活にはなかった速さである。ゆったりと言えば聞こえはいいが要するに今までよりも格段に遅いスピードが標準速度でしかもロバの気分次第かもしれない。移動手段は歩くか走るかロバに乗るかになった。排気ガスは無くなり鉄屑も出なくなり化石燃料も消費しない。新たにロバの排泄物をどう衛生的に処理するかが社会問題となる。