500文字の鵲ショートショート

毎日500文字のショートショートを記します。

隕石ハンター。

オーストラリアの砂漠をシマノジープで走り回っていた。この砂漠を自分の庭のごとくシマノは知り尽くしていたのでガイドはいつも連れてこない。地平線にエアーズロックの影が見える。シマノは金属探知機を手に砂の上を歩き回る。赤茶色の砂に黒い岩石がゴロゴロ紛れている。一つ一つに探知機を当ててシマノは反応を見る。この日、まだ一つも反応がなかった。探しているのは、宇宙から途方もない確率でやってきた隕石というロマンだ。この隕石を求めてシマノはもう25年くらい地球上を彷徨っている。シマノは隕石ハンターだった。学術的にも貴重な隕石は市場で高値を呼ぶ。隕石は、とてつもない偶然や他人には信じられないような勘で発見されたりする。シマノはそういう時、隕石が呼んだと思うことにしている。他の隕石ハンターと同じようにシマノも隕石が子供時代から好きだった。だから隕石が呼ぶのだと、ハンターの間で語り草になっている。「どうですか、そろそろシマノさんの勘は~」連れのカワグチがジープから叫んでいる。カワグチはドローンで隕石を探していた。「あっちかもな~」とシマノは北を指して言う。「じゃあ行ってみますか~」急がない人たちは出発した。