500文字の鵲ショートショート

毎日500文字のショートショートを記します。

ねずみ達の冬。

そろそろ西からの空っ風が吹く頃になる。たねずみ達は枯草の塊や藁ぼっちに身を隠す。次第に寒さが凌げなくなれば縄張りの民家へと避難した。納屋の屋根裏の梁を伝い隙間風の来ない場所、かわら屋根の隙間や民家の壁の中へ。たねずみ達は音を立てずにやって来るイタチや蛇に用心しながらお互いに体を寄せて丸まり暖をとる。夜、天敵が不意を突いて現れる。天井を走り回るたねずみ達の足音で人間達はたねずみ達の存在を知る。山に近い森のあかねずみ達は寒さが厳しくなると掘った土の中へと隠れてやり過ごす。食料は周りに溢れている。実って落ちるどんぐり等をリスのように掘った穴に蓄える。あかねずみもたねずみも子ねずみを1度に6匹程を育てながら冬を迎える。こまごまとあかねずみ達は木の実を拾い、たねずみ達は家の梁や柱の暗がりを行き来して餌を求めて外に出る。秋は皆つやつやした毛並みになり体に脂肪を蓄えて太っていく。生まれた子ねずみは、瞬く間に、親と同じくらいになって行くのでねずみ算を思い出す。雪や霙の季節になるといよいよねずみ達は気配を消していく。このしびれるような外界を、もしねずみ達が走っていたら余程のことであるからそのまま見逃す。