500文字の鵲ショートショート

毎日500文字のショートショートを記します。

タクラマカン砂漠を。

シルクロードタクラマカン砂漠を通る。赤茶色の山が繰り返し重なり合い、砂だけの光景が広がる。風が吹き砂が飛ばされ、吹き寄せられ山が動いていく。古代の遺跡群は全て砂の下に埋もれてしまった。駱駝の隊列が幻のようにやってくる。砂漠は昼よりも夜の方が旅をし易い。空に星座があるから迷わずこの恐ろしい砂漠を抜けられる。星をよむ技術が旅人には必要でそれは地球の何処でも同じだった。「砂漠の精霊というのは一体なんだろうね」森口博士は現地ガイドのフェに聞く。「長老は砂漠で死んだ者の行く末だと言われていますよ、砂漠の精霊は古い言い伝えですが」「夜になると精霊の声が旅人を誘うそうだね、そんな悪さをするのかい」「迷信ですよ、僕は夜の動物たちの鳴き声じゃないかと思ってますけど」「ああ、なるほど現実的な答えだな」森口博士はタクラマカン砂漠の写真を撮り続ける。フェは駱駝に塩をやっている。「楼蘭の場所は知ってるの?」「皆さんよく聞かれますけど今じゃここと同じですよ」「そうだろうなぁ」森口博士は白い顎鬚を撫でながら笑う。「腹が減ったな」 「先生、資料館ありますからそこ行きましょう」「美味い食事だといいんだが」駱駝が動く。