500文字の鵲ショートショート

毎日500文字のショートショートを記します。

中有に行く。

中有とは亡くなった人やこれから生まれていく人が集まる所である。事故で私は死んだようでした。カーブを曲がる時、対向車が私の方へ向かってくるのが分かりましたが長い一瞬でした。車の運転手がはっきりと見えました。彼もまた、ガードレールに突っ込み車の前方は形がありませんでした。私の体はガード下に落ちていきました。再会したのは、次に目が覚めた時でした。私はたいした痛みもなく、自分がこうしていることが腑に落ちませんでした。あの事故から自分が無傷ではあり得なかったからです。しかし私は何ともなく立っていました。辺りは例えるなら夢の中のような、ふわふわとして視界がはっきりせず体が水の中にあるようでした。周りの人の気配がやがて形になって現れていきます。その中に事故の運転手がいました。彼は私に気づくと驚いた顔をした後、自分の境遇に戸惑っているようでした。その場に集う人たちの年齢は全く様々で、ぼうっとしている人も有れば、にこやかに立ち話をしている人もいました。子供たちも塊になって集まっていました。しばらく眺めていると最近新聞で見覚えのある顔を見つけたのです。私に気づくとその人は幸せそうに笑って返してくれました。