500文字の鵲ショートショート

毎日500文字のショートショートを記します。

千段怪談。

ある時、姉に千段の階段を競争しようと持ちかけた。夏休みのラジオ体操の後、私たちは千段あるといわれる石段の下に揃う。ジャンケンで姉が勝ち「チ・ヨ・コ・レ・イ・ト!」と言いながら階段を駆け上がる。「グ・リ・コ・の・お・ま・け・つ・き!」「パ・イ・ナ・ツ・プ・ル!」ジャンケンしてはチョコレート、グリコのおまけつき、パイナップルだけを言い続けて私たちは上へ上へと。ジャンケンの強い姉は先にいる。ようやく半分程来たという所で私は姉の耳が尖り額と両目のふちが赤くなり顔に獣のヒゲがあることを知る。「お姉ちゃん顔が変。ヒゲがある」「あんたこそ狐みたいな顔だけど大丈夫なの」と狐顔の姉が聞いた。結局私の説得は失敗しジャンケンは再開され、千段に近づくにつれ私たちにはふさふさと尻尾まで生えた。頂上には小さな祠が在る先に大岩が折り重なっていた。姉はポケットから数個のビー玉と飴を出し祠に供えた。「帰ろうか」との姉の声で降り始める。ふさふさした尻尾がまだ2人にはついていた。ようやく地上に戻ると狐の面相も尻尾も無事になくなった。狐でない私たちは安堵しながら家に帰ったが両親にひどく叱られた。2日間行方知れずだったからだ。