500文字の鵲ショートショート

毎日500文字のショートショートを記します。

アンドロイド。

私は1体のアンドロイドを申請した。70歳になり何かと生活するのに支障が出てきたからだ。アンドロイドは申請すれば永年支給される。初期設定を済ませ起動する。性別指定しないアンドロイドは実に扱いやすい。淡々と私の指示をこなし誤りがあれば直ぐ上書きしていく。動かなければ置物と一緒になる。私は用のない時アンドロイドを定位置に座らせておいた。それはまるで空気のようだった。名前も付けなかった。アンドロイドからも求める事もなく(初期設定の時点で私がそうしたからであるが)順調に私達は生活していた。ある時私は軽い気持ちでアンドロイドに質問した。「もう1体アンドロイドがいた方があなたは楽しいだろうか」その時アンドロイドは台所で食事を作っていた。「私の他にアンドロイドをお持ちになりたいということでしょうか?」「いや、私はどちらでもいいんだがあなたはどうだろうかと思ってね」「私の意見をお求めなんですね」「そうだ」アンドロイドはしばらく無言で作業をしていた。「先程のご質問のことですが宜しいでしょうか?」「いいよ」「私は現状、必要ないと判断しましたが如何でしょうか」「そうか分かった」私は何となく物足りなさを覚えた。